ここ数年オールセラミックスクラウンの一種であるジルコニア冠が、色が白くて、しかも、単に白いだけでなく、色のバリエーションも増え、自然感もあり、強度は金属並み<ジルコニアは白い金属と呼ばれ、セラミックスの包丁があるのでわかるように、薄くしても破損しない>ということで、急速に普及してきました。
従来のセラミックスクラウンが、強度がいまひとつなので、1本だけの歯、すなわち単冠しか作れなかったのに対してジルコニアはブリッジにも適応できますし、歯ぎしり、食いしばりという 歯に異常に強い力が加わる(これが、現在の歯科治療で最も困難な課題のひとつです)ブラキシズムの患者にも大丈夫ということで、天然歯だけでなく、インプラントにかぶせる歯にも使えるというのも、ジルコニアが普及してきた理由のひとつです。
特に、CAD/CAM というコンピュータ技術を使って作るので、技工士の技術レベルによる差が出にくいため、技工士が不足しがちなこの日本でも普及しております。
しかしながら、新しい技術というのは注意が必要です。
なぜなら、いくら実験室のレベルで良い結果が出ても、それが人間の体の中で本当に長期間にわたって安定して機能するのか?
長期間というのは、5年とか10年ではありません。
何しろ今は人間の寿命が80歳とか90歳ですから、何十年も持たないといけません。
そこで、当クリニックで今まで行ってきたジルコニアについて述べます。
写真はジルコニア冠を歯に試適(接着剤を使わず試しに はめること)して咬んでもらったのですが、不適合で少し浮いた状態だったものを噛んだところ、パリっと音がして割れてしまったものです。
いくら不適合だからと言って、金属製の冠ではこうしたことは、起こりません。
つまり、ジルコニアが金属と同じ強度を持つというのは、事実ではありません。
ただ、ジルコニアの名誉のために説明を加えると、ジルコニアは接着性セメントで歯に密着させ、歯と一体型になるとこうした割れ方はしません。
CAD/CAM というコンピュータ技術を使って作るので、製作者による差が出にくくなったとはいえ、ジルコニアと歯の適合性は、貴金属の修復物を使った場合に比べてかなり劣ります。
なので、もし私が一番奥の歯(最も強い力がかかります)にかぶせ物を入れるとしたら何を入れるか?と聞かれたら迷わず、貴金属の冠を入れます。
歯との適合性は抜群ですし、適度にすり減ってくれる歯に優しい材料だし、何より長持ちするからです。
これは、直接本人と話をしたり、研修会や学会で聞いたことですが、日本のみならず、欧米の歯科医師でも自分の一番奥の歯にかぶせるとしたら、貴金属冠にするという方は多いです。